​ネットの誹謗中傷、削除請求でお困りの方へ

1 投稿の削除請求

ご相談頂く中で多いのは、匿名掲示板(5ちゃんねる、爆サイ、ホスラブなど)、SNS(Twitter、Instagramなど)、ブログ、口コミサイト、グーグルマップなどで誹謗中傷がされている、風評被害を受けているので、投稿を削除したい、書き込んだ人物を特定したい、というものです。個人の方だけでなく、企業の方からもご相談頂いています。

削除請求や発信者情報開示請求をするためには、自分の権利(名誉権、プライバシー権、肖像権、著作権など)が侵害されていることが必要です。著作権侵害であれば、自己が権利者であるということを明らかにする必要があります。以下では、誹謗中傷(名誉毀損・侮辱)を前提として記載します。

自分の権利が侵害されているかの判断にあたっては、インターネット上に書き込まれている内容が正に自分に対してなされているかどうかの判断が必要です(同定可能性といいます。)。フルネームが記載されていても、同姓同名の他人のことの可能性がありますし、一方で、伏字であったり、名字だけの記載(ペンネーム・源氏名などの場合も含む)であっても文脈や他の記載から同定することができれば、権利が侵害されているということができます。


●削除請求を行う流れの概要としては,以下のとおりです。

①サイト管理者に対する任意の削除依頼

サイトごとに削除依頼の方法が異なりますので、まずは、サイトの削除依頼の方法や利用規約を確認します。そのうえで、サイトの方法に沿った削除依頼を行います。

②送信防止措置依頼書の送付

削除依頼のフォームがない(書面による削除依頼のみ受け付ける場合もあります)、またはサイトの方法に沿った削除依頼をしても削除されない場合には、サイト管理者等に「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」(一般社団法人テレコムサービス協会の書式)(サイトによっては専用の書式が用意されている場合があります)を送付し、削除を求めます。一般社団法人テレコムサービス協会のガイドラインは最新の動向を踏まえ、改訂が行われており、参考になります。

弁護士に依頼せず、ご自身で削除の依頼を行う場合には、インターネット違法・有害情報相談センターを活用することもご検討頂いたほうがよろしいかもしれません。

③削除の仮処分

サイト管理者等が任意の削除に応じてくれない場合には、法的手続きへと進んでいくことになります。

削除請求をする法的手段としては、民事訴訟によることも可能ですが、早期の削除実現のため、侵害情報の削除を求める仮処分命令を裁判所に申し立てることになります。

④削除請求訴訟

仮処分命令が認められれば、削除が実現されるため、通常の民事訴訟を利用するメリットがある場合(担保が不要である点など)にのみ利用することになります。

2 発信者情報開示請求

発信者情報とは、以下の事項のことを指します(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則第2条)。令和4年10月1日に施行された法律改正により、変更しています。

①から⑧及び⑭までを「特定発信者情報以外の発信者情報」(プロバイダ責任制限法第5条1項柱書)といい、⑨から⑬までを「特定発信者情報」(プロバイダ責任制限法第5条1項柱書)といいます。

①発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の氏名又は名称
②発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の住所
③発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電話番号
④発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電子メールアドレス
⑤侵害情報の送信に係るIPアドレス及び当該IPアドレスと組み合わされたポート番号
⑥侵害情報の送信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
⑦侵害情報の送信に係るSIM識別番号
⑧⑤から⑦までに係る開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻(タイムスタンプ)
⑨専ら侵害関連通信に係るIPアドレス及び当該IPアドレスと組み合わされたポート番号
⑩専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号

⑪専ら侵害関連通信に係るSIM識別番号
⑫専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号
⑬⑨から⑫までにに係る開示関係役務提供者の用いる電気通信設備に侵害関連通信が行われた年月日及び時刻(タイムスタンプ)
⑭発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者についての利用管理符号

 

●発信者情報開示請求を行う流れの概要としては、以下のとおりです。

①サイト管理者に対する任意の開示請求

サイト管理者に対して、発信者情報開示請求書(一般社団法人テレコムサービス協会の書式)を送付するなど任意の開示請求をします。匿名掲示板では、発信者の氏名・住所については把握していないことから、IPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。サイト管理者において、権利の侵害が確認できると判断した場合、IPアドレスとタイムスタンプが開示されます。

②サイト管理者に対する発信者情報開示請求(仮処分)

サイト管理者がIPアドレスとタイムスタンプを任意に開示しない場合、発信者情報開示請求(仮処分)の法的手続きへと進みます。

③接続プロバイダの特定

開示されたIPアドレスから発信者が接続したプロバイダを特定します。

④接続プロバイダに対する開示請求

接続プロバイダに対して、発信者情報開示請求書を送付するなど任意の開示請求をします。

接続プロバイダは、発信者情報開示請求があった場合には、発信者(接続プロバイダの契約者)に対して意見照会書を送付し、発信者情報の開示に応じるか否かについて照会します。

この段階で、発信者は自身の発信について開示請求がなされていることを認識することが多いです。

接続プロバイダが任意に開示するケースもあるようですが、ほとんどの場合には、任意の開示はなされないとされています。なお、時間を要するなど通信ログが消去される可能性がある場合には、通信ログ保存の請求を行う必要があります。

⑤発信者情報開示請求訴訟

接続プロバイダに対して、発信者の情報(氏名・住所など)の開示を求める訴訟を提起します。このときに仮処分ではなく、本案訴訟となるのは、接続プロバイダは発信者の情報を保有しており、仮処分であれば必要な保全の必要性を充たさないことが多いためです。

本案訴訟では、基本的には権利侵害の有無を争点として争われることになります。

⑥発信者の特定

⑤の本案訴訟における判決(または発信者からの開示についての同意)により、発信者の特定が完了することになります。

 

​​※Twitterの投稿に対する発信者情報開示請求の手順はコチラ

※爆サイの投稿に対する発信者情報開示請求の手順はコチラ

3 発信者情報開示命令事件に関する裁判手続(2022年10月1日施行)

発信者情報開示命令事件に関する裁判手続は、プロバイダ責任制限法の改正(令和3年法律第27号)が令和4年10月1日に施行されたことにより、従来の発信者情報開示請求の訴訟手続等に加えて、新たに発信者情報開示命令事件に関する裁判手続が創設されました。

改正後のプロバイダ責任制限法第8条以下に規定されています。発信者情報開示命令事件については、令和4年10月1日以前にされた投稿に関しても利用が可能とされています。


改正によって創設された発信者情報開示命令事件に関する裁判手続は、非訟手続となり、手続きが簡易・迅速になることが期待されています。従来は、発信者を特定するためには、SNS事業者とインターネット接続事業者に対して、それぞれ法的手続を行う必要がありましたが、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続では、一体の手続で完結させることも可能になります。


発信者情報開示命令事件に関する裁判手続は、以下の3つの手続きがあります。
・発信者情報開示命令

権利の侵害に係る開示関係役務提供者に対し、プロバイダ責任制限法第5条第1項又は第2項の規定によって発信者情報の開示を求める手続きです(プロバイダ責任制限法第8条)。
・提供命令

発信者情報開示命令の申立てがあった場合に、侵害情報の発信者を特定することができなくなることを防止するため必要があるとき、申立ての相手方である開示関係役務提供者に対して、侵害情報に係る他の開示関係役務提供者(経由プロバイダ等)の氏名等の情報を申立人に提供するとともに、開示関係役務提供者(コンテンツプロバイダ等)が保有するIPアドレス及びタイムスタンプ等を、申立人には秘密にしたまま、他の開示関係役務提供者に提供することを求める手続きです(プロバイダ責任制限法第15条1項1号)。
・消去禁止命令

消去禁止命令は、発信者情報開示命令事件の審理中に発信者情報が消去されることを防ぐため、裁判所が、申立てにより、発信者情報開示命令事件(異議の訴えが提起された場合にはその訴訟)が終了するまでの間、開示関係役務提供者が保有する発信者情報の消去禁止を命ずることができることとするものです(プロバイダ責任制限法第16条)。

 

●発信者情報開示命令事件に関する裁判手続の流れは、以下のとおりです。SNS事業者への申立てから始まる場合を想定しています。
①SNS事業者(コンテンツプロバイダ)への発信者情報開示命令申立て・提供命令申立て

発信者情報開示命令と提供命令と同時に申し立てた場合、提供命令が先行して判断されます。

提供命令が発令され、SNS事業者に送達された後、SNS事業者は、提供命令にしたがって、申立人に対して、インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)の氏名又は名称及び住所を提供します(第1段階の提供)。
提供命令を受けることにより、SNS事業者(コンテンツプロバイダ)への開示命令の決定を待たずに、インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令の申立てが可能となります。

②インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)への発信者情報開示命令申立て・消去禁止命令申立て
発信者情報開示命令と消去禁止命令と同時に申し立てた場合、消去禁止命令が先行して判断されます。

③SNS事業者(コンテンツプロバイダ)に対し、インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)へ開示命令の申立てを行ったことの通知

インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令申立てをした後は、SNS事業者(コンテンツプロバイダ)に対し、開示命令申立てを行ったことを通知します。

この通知を受けたSNS事業者(コンテンツプロバイダ)は、インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)に対して、提供命令に従って、保有する発信者情報(ログインIPアドレス・タイムスタンプ等)をインターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)に提供することになります(第2段階の提供)

インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)は、このSNS事業者(コンテンツプロバイダ)からの発信者情報の提供により、自社が保有する発信者情報を用いて、発信者を特定することが可能となります。
④SNS事業者(コンテンツプロバイダ)・インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)へ発信者情報開示命令の審理

裁判所は残っているSNS事業者(コンテンツプロバイダ)・インターネット接続事業者(アクセスプロバイダ)に対する発信者情報開示命令の事件を併合し、一体として審理し、判断することになります。

⑤発信者に対する損害賠償請求

発信者情報開示命令が出され、インターネット接続事業者(経由プロバイダ)から発信者の情報が開示された後は、従来と変わらず、発信者に対して、損害賠償請求等を行っていくことになります。

4 発信者情報開示に係る意見照会書が届いた方(発信者側)

発信者情報開示に係る意見照会は、プロバイダ責任制限法第6条1項に根拠規定があり、開示請求を受けたプロバイダ(インターネット接続プロバイダ、またはコンテンツプロバイダ)は、発信者の意見を聴かなければなりません(発信者と連絡することができない場合などを除きます)。

発信者情報開示に係る意見照会書は、主にインターネット接続プロバイダ(NTT、KDDI、ソフトバンクなど)から送られてくることが多いです。

その理由としては、コンテンツプロバイダ(匿名掲示板など)では、サイト運営者側が投稿者(発信者)の連絡先(住所、メールアドレスなど)を把握していないため、発信者と連絡することができないという条文上の例外規定に該当し、照会を省略することができるからです。


プロバイダ側が発信者情報開示請求を受け、プロバイダにおいて発信者情報の保有の有無を確認し、発信者情報を保有している場合に、発信者に対して発信者情報に係る意見照会書を送ることになります。


発信者情報に係る意見照会書には、以下の情報が記載されています。

・請求者の氏名

・プロバイダが管理する特定電気通信設備(該当のURLが記載されています。)

・掲載された情報(該当のURLに記載されている内容)

・侵害された権利、権利が明らかに侵害されたとする理由

・発信者情報の開示を受けるべき正当理由

・開示を請求されている発信者情報

なお、請求者の氏名など一部の情報は非開示となっている場合があります。


意見照会書に記載されている、「掲載された情報」に身に覚えがない場合には、回答書の「発信者情報開示に同意しません。」に○(まる)をつけ、理由として、身に覚えがないことを記載することになります。

ただし、プロバイダ側からは、契約者宛に照会書が送られてきますので、同居する家族などが発信している可能性がありますので、家族にも確認したほうが良いかもしれません。


「掲載された情報」を書き込んだものの、発信者情報の開示に同意したくない場合には、同意しない理由を具体的に書くことになります。例えば、掲載された情報について、名誉毀損に該当しない理由などについてご自身の認識を記載しておく必要があります。

何も理由を記載しなければ、プロバイダ側が発信者情報の開示をするかを独自に検討することになりますが、発信者の主張を考慮することができなくなりますので、プロバイダ側に適切に反論してもらうためにも理由は記載するのが望ましいです。令和4年10月1日に施行された法律改正により、理由も聞くこととされています。

法律上の権利として開示請求がなされていますので、開示に同意しない理由については、法的な反論をきちんとする必要があります。発信者情報開示に係る意見照会書が届いたからといって、直ちに違法行為を行ったと断定されるわけではありませんので、適切に反論をした結果として、その後の手続に移行しないということもありえます。


回答書は、到着後から2週間以内に提出するように求められることがほとんどですので、記載方法がわからない場合などには、すぐに専門家に相談することが望ましいです。


プロバイダ側は発信者からの回答書の内容を踏まえ、請求者に対して、発信者情報を開示するか否かを判断し、最終的にプロバイダが開示するかどうかを決定します。権利侵害が明らかな場合には、発信者の同意がなくとも開示される場合があります。


プロバイダ側が請求者に対し、発信者情報の開示を拒否し、請求者側が納得できない場合には、請求者は、プロバイダ側を相手に裁判上の手続きを行っていくことになります。

裁判所の判断により、開示が認められた場合には、発信者の同意の有無に関係なく、発信者情報が開示されることになります。

Bittorrent関連で意見照会書が届いた場合については、コチラ

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