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  • 執筆者の写真弁護士高橋 広希

発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら(BitTorrent関連)

更新日:2022年9月12日

BitTorrentを利用して、ファイルをダウンロードしてしまい、発信者情報開示にかかる意見照会書が届いたというご相談を受けることが多くなってきました。発信者情報開示にかかる意見照会書が届いた際の対応全般については、別の記事で解説していますので、今回は、BitTorrentなどのファイル共有ソフト関連での発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合の対応について解説致します。


1 BitTorrentとは

BitTorrentとは、インターネット上で、中央サーバを設けずに,P2P方式でファイルを共有するためのプロトコルの一つであり、同プログラムを実装したクライアントソフトの名称でもあります。BitTorrentにおいては、ファイルのダウンロードを、

①対象ファイルに対応するトレントファイルを入手してBitTorrentクライアントソフトに取り込み、

②当該トレントファイルで指定されたトラッカー(対象ファイルの提供者を追跡し、同提供者のリストを管理するサーバ)と通信して同提供者のIPアドレスの一覧を入手し、

③入手したIPアドレスの一覧から1つ以上のIPアドレスの端末を選択して対象ファイルの送信要求を行い、選択した端末から「ピース・ファイル」と呼ばれる対象ファイルが断片化されたデータを順次受信することにより行います。

BitTorrentでファイルをダウンロードしたネットワークの参加者は、BitTorrentクライアントソフトを停止させるまで、トラッカーに対し、当該ファイルが送信可能であることを継続的に通知し、他の不特定のネットワーク参加者からの要求があればいつでもこれを送信し得る状態にします。


簡単な言葉にすると、特定のファイルを入手した使用者は、トラッカーに登録され、他の使用者から要求を受けた場合には、自己の使用する端末に保存した当該ファイルを送信して提供することになります。具体的には、特定のファイルをダウンロードして自分の端末に保存すると、その端末の電源が入っていてインターネットに接続されている限り、自分がダウンロードしたファイルの送信を要求した不特定の者に対して、自分の端末に保存されたファイルを自動的に送信する状態とします。


2 著作権侵害

前記の、「トラッカーに対し、当該ファイルが送信可能であることを継続的に通知し、他の不特定のネットワーク参加者からの要求があればいつでもこれを送信し得る状態にする」ことが、著作権法上の自動公衆送信可能化行為に該当し、著作権(送信可能化権)を侵害することになります。


3 BitTorrent監視システム

BitTorrentを利用したことについて、発信者情報開示請求がなされる場合、多くのケースでは、BitTorrent監視システム(代表的なものはP2P FINDER)による調査の結果、IPアドレスが判明します。

P2P FINDERは、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会のプロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインにおいて、信頼性が認められると認定したシステムとされており、裁判例でも同様に信頼性が認められるシステムとされています。


4 発信者情報開示に係る意見照会書

BitTorrentを利用したことにより、漫画、映画、音楽の著作権者から、著作権侵害を理由として開示請求され、発信者情報開示にかかる意見照会書が送られてきます。

同種の大量の開示請求がなされている関係もあり、実際にダウンロードした日から半年以上が経過してから届くこともありますし、作品ごとに権利侵害をしていることになりますので、作品ごとに別々に届くこともあります。

この段階で、開示に応じるか否かという一つの決断をすることになります。全く身に覚えがないという場合であっても、前述のBitTorrent監視システムの高い信頼性がありますので、反証していくことはハードルが高いです。

仮に開示に応じないと回答した場合であっても、プロバイダの独自の判断で、プロバイダ責任制限法の要件に該当するとして開示される場合もありますので、ご留意下さい。


5 示談交渉

発信者情報が開示がされると、請求者(または代理人弁護士)から損害賠償請求を求める書面が届くことになります。示談交渉の段階を踏まずに訴訟提起がなされる場合もございますが、任意の請求が届くことが多いと思います。

作品ごとに著作権侵害が成立することになりますが、BitTorrentを利用して多数のダウンロードをしてしまっている場合には、作品ごとに示談するのではなく、著作権者と包括的な示談をするということも検討したほうが良いかと思います。

損害賠償請求を無視するという選択を採られる方もいるかもしれませんが、著作権法違反は刑事罰が規定されていますので、刑事告訴されるというリスクに晒される可能性が高くなりますので、ご留意下さい。


BitTorrentを利用して、著作権法に違反してしまい、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合には、速やかに弁護士に相談して、示談交渉を進めるのが望ましいかと思います。

アダルト作品などをダウンロードしたというような場合には、家族に相談することも抵抗があり、一人で悩んでしまっている方もいらっしゃるかと思います。弁護士には職務上の守秘義務がありますので、安心してご相談下さい。


 

からんこえ法律事務所では,インターネット上の誹謗中傷などのトラブル(請求者との交渉による示談交渉、請求者から訴えられた訴訟対応、発信者情報開示に係る意見照会書の回答書の作成業務など対応しております。)に関する法律相談を取り扱っておりますので、お悩みのある方はお問い合わせ下さい。オンライン相談にも対応しております。宮城県外の方からのご相談にも対応しておりますので、お困りの方はお問い合わせ下さい。



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