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  • 執筆者の写真弁護士高橋 広希

発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら

更新日:2023年9月26日

仙台の弁護士の高橋広希です。


インターネット上で誹謗中傷をしてしまい,発信者情報開示に係る意見照会書が届いたという投稿した側(書き込んだ側)の方からご相談頂くことが増えてきました。

インターネットの誹謗中傷が大きくクローズアップされていますので,誹謗中傷されてしまった方が権利行使として,発信者情報開示請求を行うケースが増えているからかもしれません。

実際にこの記事にも「開示請求された」「開示請求 届いた」と検索して辿り着く方も多いようです。


今回の記事では,発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合に,どうすればよいのかを説明致します。発信者情報開示請求の方法は,過去の記事を参照して下さい。


1 発信者情報開示に係る意見照会の根拠条文

発信者情報開示に係る意見照会は,プロバイダ責任制限法第4条2項に根拠規定があり,開示請求を受けたプロバイダ(インターネット接続プロバイダ,またはコンテンツプロバイダ)は,発信者(投稿者)の意見を聴かなければなりません(発信者と連絡することができない場合などを除きます)。

発信者情報開示に係る意見照会書(一般社団法人テレコムサービス協会の書式)(リンクの4頁目から7頁目まで)は,主にインターネット接続プロバイダ(NTT,KDDI,ソフトバンクなど)から送られてくることが多いです。

その理由としては,コンテンツプロバイダ(匿名掲示板など)では,サイト運営者側が投稿者(発信者)の連絡先(住所,メールアドレスなど)を把握していないため,発信者と連絡することができないという条文上の例外規定に該当し,照会を省略することができるからです。


プロバイダ側が発信者情報開示請求を受け,プロバイダにおいて発信者情報の保有の有無を確認し,発信者情報を保有している場合に,発信者に対して発信者情報に係る意見照会書を送ることになります。


発信者情報に係る意見照会書には,

・請求者の氏名

・プロバイダが管理する特定電気通信設備(該当のURLが記載されています。)

・掲載された情報(該当のURLに記載されている内容)

・侵害された権利

・権利が明らかに侵害されたとする理由

・発信者情報の開示を受けるべき正当理由

・開示を請求されている発信者情報が記載されています。

なお,請求者の氏名など一部の情報は非開示となっている場合があります。


2 意見照会書に対する回答について

意見照会書に記載されている,「掲載された情報」に身に覚えがない場合には,回答書の「発信者情報開示に同意しません。」に○(まる)をつけ,理由として,身に覚えがないことを記載することになります。

ただし,プロバイダ側からは,契約者宛に照会書が送られてきますので,同居する家族や従業員などが発信している可能性がありますので,家族にも確認したほうが良いかもしれません。


「掲載された情報」を書き込んだものの,発信者情報の開示に同意したくない場合には,同意しない理由を具体的に書くことになります。

例えば,掲載された情報について,名誉毀損に該当しない理由などについてご自身の認識を記載しておく必要があります。

回答書に何も理由を記載しなければ,プロバイダ側が発信者情報の開示をするかを独自に検討することになりますが,発信者の主張を考慮することができなくなりますので,プロバイダ側に適切に反論してもらうためにも理由は記載するのが望ましいです。

法律上の権利として開示請求がなされていますので,開示に同意しない理由については,法的な反論をきちんと行う必要があります。発信者情報開示に係る意見照会書が届いたからといって,直ちに違法行為を行ったと断定されるわけではありませんので,適切に反論をした結果として,その後の手続に移行しないということもありえます。


回答書は,到着後から2週間以内にプロバイダに提出するように求められることがほとんどですので,記載方法がわからない場合などには,すぐに専門家に相談することが望ましいです。


プロバイダは発信者からの回答書の内容を踏まえ,請求者に対して,発信者情報を開示するか否かを検討し,最終的にプロバイダが開示するかどうかを決定します。

発信者が開示に同意しない場合,プロバイダ側は基本的には任意の開示に応じませんが,著作権侵害など権利侵害が明白であり,違法性阻却事由もないと思われる場合には,発信者が同意しなくても開示に応じる場合もあります。


プロバイダ側が請求者に対し,発信者情報の開示を拒否し,請求者側が納得できない場合には,請求者は,プロバイダ側を相手に裁判上の手続きを行っていくことになります。なお,訴訟提起された後にも発信者情報開示に係る意見照会書が届く場合がありますので,同じ投稿について2回届く場合もあります。

裁判所の判断により,開示が認められた場合には,発信者の同意の有無に関係なく,発信者情報が開示されることになります。

名誉毀損・プライバシー侵害に関する開示請求に関し,発信者情報が開示されるか否かは,開示請求者を対象とした投稿か否か(同定可能性),権利侵害が明らかであるかどうか(権利侵害の明白性),違法性阻却事由があるかどうかという3点を中心に判断されます(なお,著作権侵害に基づく開示請求の場合は異なる争点となります)。


発信者情報が請求者に開示された場合,請求者は損害賠償請求など「発信者情報の開示を受けるべき正当理由」に記載された内容の実現に向けての手続きを進めていくことになります。


請求者が開示された情報をもとに,捜査機関に対して刑事告訴をする場合もありますので,その場合には,警察から突然に連絡がくる場合もあります。


発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合には,請求者が損害賠償請求などをする意思があることを示しているものですので,早期に相談をすることで,事態の悪化を防ぐことができるかもしれません。




からんこえ法律事務所では,インターネット上の誹謗中傷などのトラブル(請求者との交渉による示談交渉,請求者から訴えられた訴訟対応,発信者情報開示に係る意見照会書の回答書の作成業務など対応しております。)に関する法律相談を取り扱っておりますので,お悩みのある方はお問い合わせ下さい。


(追記:2021年3月3日)

発信者情報開示に係る意見照会書の回答書に関して,費用についてのお問い合わせを頂くことが多いため,費用について記載しておきます。

弁護士名を記載せず,ご自身のお名前で提出して頂くことを前提とした,発信者情報開示に係る意見照会書の回答書の作成は55,000円(税込)で対応しています。開示の対象となっている投稿が多数となっている場合には増額となりますが,原則として55,000円(税込)となります。内容にもよりますが,最短2日で作成致します。


オンライン相談にも対応しております。宮城県外の方からのご相談にも対応しておりますので,お困りの方はお問い合わせ下さい。



 

【関連条文】

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称:プロバイダ責任制限法)

第4条2項 開示関係役務提供者は,前項の規定による開示の請求を受けたときは,当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き,開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。


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