• 弁護士高橋 広希

債権回収と法的手続について

貸したお金が返ってこない,工事代金を支払ってこないがどうすれば良いかというお問い合わせを受けることがあります。約束の期限までに相手方から支払いがなされず,連絡が取れないということも多いようです。


当事者間の交渉で解決できない場合には,訴訟などの法的手続きを検討することになりますが,以下において,実際に採りうる方法を解説します。


1 内容証明郵便による請求

法的手続を行う前に,請求する意思が強固であることを示すために内容証明郵便による請求を行うことがあるかと思います。

内容証明郵便によって請求したとしても支払いがなされない場合には,任意に支払ってくる可能性が著しく低いことになりますので,具体的に法的手続を検討することになると思います。


2 合意内容の書面化

相手方が不履行をした後,残債務の金額を当事者間で確認する場合や,分割払いで合意した際に新たに合意内容を書面化する方法があります。債務確認書債務弁済契約書準消費貸借契約書という名称で作ることが多いかと思います。

新たに貸し付けたことにして借用書を作成するということが一般的に行われていますが,その場合には,準消費貸借契約となりますので,旧債務の特定などに留意する必要があります。


3 公正証書の作成

当事者間で書面を作成することもありえますが,その内容を公正証書としておくということで,その後の訴訟や不履行に備えておくことが考えられます。

公正証書は,公証人が関与して作成されるため,高い証明力を有しています。また,相手方が同意すれば,不履行があった場合に公正証書によって強制執行を行うことも可能です(強制執行認諾文言のある公正証書)。

ただし,相手方に合意内容を公正証書化することを強制することはできませんので,相手方が作成に応じない場合には,公正証書を作成することはできません。


4 支払督促

簡易迅速に行う手続きとして,支払督促(民事訴訟法382条)があります。

支払督促は,金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合に,相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます。

支払督促は,書類審査のみなので,訴訟の場合のように審理のために裁判所に行く必要はなく,裁判所に納める手数料も,訴訟の場合の半額です。


債務者が支払督促に対して,異議を申し立てると,請求額に応じ,地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の手続に移行します。

債務者が異議を申し立てなければ,申し立てた内容の支払督促が出され,債務名義となります。


5 少額訴訟

支払督促とは異なり,期日への出席が必要となりますが,通常訴訟よりは簡易迅速な手続きとして,少額訴訟(民事訴訟法368条)があります。

少額訴訟は,60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限って利用でき,1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする手続きです。

原告の言い分が認められる場合でも,分割払,支払猶予,遅延損害金免除の判決がされることがあります。訴訟の途中で話合いにより解決することもできます。

債務者が通常訴訟手続きへの移行を求めると,通常の民事訴訟の手続に移行します。


6 民事調停

訴訟手続とは異なり,裁判所の調停委員会の関与のもと,当事者間での合意することで解決を目指す民事調停があります。

民事調停は,当事者双方がお互いに譲歩することで解決を目指すことになり,金銭請求以外を内容とすることも可能です。

民事調停で合意した内容は調停調書として,債務名義となり,これに基づいて強制執行が可能です。

民事調停は,あくまでも話し合いによる解決を目指す手続きのため,話し合いができない場合や,双方の主張の隔たりが大きい場合など,合意に至らなかった場合,別途,訴訟提起を行わなくてはなりません。


7 通常訴訟

法的手続の代表格が通常訴訟です。通常訴訟では,当事者が提出した証拠と主張により,裁判官が判決を下すことを前提に紛争の解決を図ることになります。

訴訟に勝訴すれば,債務名義である確定判決ないし仮執行宣言付判決を取得することができます。訴訟手続の中で和解をすれば,同じく債務名義である和解調書を取得することができます。いずれも,債務者に対する強制執行が可能となります。

訴訟は,事案にもよりますが,相手方が争う場合,3回から6回程度(複雑な事案であれば10回以上のこともありえます。)の期日を経て判決が出されることになりますので,訴訟提起してから半年から1年程度の時間を要することが多いです。

通常訴訟を検討する場合には,同時に仮差押え手続きを検討することが多いです。通常訴訟は時間がかかるため,先行して仮差押え手続きをすることで,相手方の対応が変わることもありえるので,仮差押えが可能なケースでは実施することになります。


8 留意すべき事項:回収可能性

債権回収を行う際に,自らの請求権を根拠付ける証拠があるのかということは極めて重要ですが,相手方から回収することが可能かどうか(回収可能性)も同じくらいに重要です。

債務名義を取得したとしても,相手方に財産がなければ,現実に回収することができません。

回収可能性を判断するためには,事前事後の調査が不可欠です。

個人であれば,他からの借入があるのか,勤務先がどこなのか,主として利用している金融機関はどこなのかという点などを考慮することになります。

法人であるならば,当該法人の近時の業績はどうなっているのか,主要な取引先がどうなっているのか,従業員の退職が続いていないかなど,信用に関する情報を考慮することになります。

これらの情報をもとに,勝訴の見込みがあり,回収可能性があると判断できる場合には,速やかに法的手続に移行することになります。


9 弁護士に相談する意義

債権回収を行ううえで,重要なのは迅速さだと思いますが,法的手続を採ったことで,相手方が破産を決意するということもありえるため,場合によっては,法的手続をせずに,保証人を求めたり,交渉によって回収を図ったほうが望ましい場合もあります。

弁護士が証拠や資料により,勝訴の見込み,回収可能性,破産(倒産)のリスクなどを総合的に検討し,債権回収の戦略を立て,債権回収の実現を図ります。

実際の不払いにはなっていないものの,将来の支払いに不安がある場合などにも弁護士に相談することで,そういった将来のリスクに備えることも可能です。


当事務所では,示談交渉,訴訟手続はもちろんのこと,既に債務名義がある場合の強制執行手続のみのご依頼をお受けいたします。

少しでも回収に不安がある場合には,まずはお問い合わせ下さい。


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養育費とは,子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます(民法766条第1項に子の監護に要する費用として規定があります。)。 子どもが経済的・社会的に自立するまで(成熟するまで),子どもを監護している親が,他方の親から養育費を受け取ることになります。 養育費に関する相談として多いのは,相場がいくらなのかということです。 インターネットで検索すると,裁判所が公表している算定表が出てきますので