• 弁護士高橋 広希

遺言書の書き方・種類

更新日:10月3日

遺言書を作成したいとのご相談を頂くことがあります。ご相談の内容としては,誰にどの財産を相続させたらよいのかというものもありますが,どのように作成したらいいのかという作成の方法について聞かれることが多くあります。


遺言書は,民法の規定に定められた方式で作成しなければなりません。遺言は,厳格な方式が定められており,その方式に従わない遺言は,全て無効となります。

亡くなる前に,口頭で「~~と言われた」とか,動画撮影・録音していたとしても遺言としての法律上の効力はありません。


一般的には,遺言書(ゆいごんしょ)と言われますが,民法では遺言(いごん)として規定されています。ただし,民法1004条で「遺言書」という単語も出てきますので,どちらでも違いはないと思ってもらっても良いとは思います。


遺言書は,一般に,法律の定めと異なる相続の配分を生前に希望するときに作成するものです。遺言書がなければ,民法886条以下で規定されている相続権のあるものが法定相続分にしたがって相続することになります。


遺言書は,15歳以上であれば作成することができます(民法961条)。遺言書を作成する際には,遺言能力を有していなければなりません(民法963条)(遺言能力について争いになるケースもありますので,遺言能力については別の記事で解説致します。)。


遺言書には普通の方式によるものとして,①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言があります。この他に特別の方式の遺言(民法976条から979条)がありますが,この記事では割愛します。


自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは,遺言者が単独で作成することができる遺言書です。

自筆証書遺言は,遺言書の全文,作成日付,氏名を,必ず遺言者が自書し,押印して作成します(民法968条1項)。

作成日付は,日付が特定できるよう正確に記載します(具体的な日付を特定できない「令和3年10月吉日」などは不可)。

遺言書に添付する相続財産の目録だけは,自筆でなくても構いません。パソコンで作成したり,不動産(土地・建物)の登記事項証明書,金融機関の通帳のコピーなどの資料を添付する方法で作成することができますが,その場合は,その目録の全てのページに署名押印をする必要があります(民法968条2項)。

内容を書き間違った場合の訂正や,内容を書き足したいときの追加は,その場所が分かるように示した上で,訂正又は追加した旨を付記して署名し,訂正又は追加した箇所に押印する必要があります(民法968条3項)


自筆証書遺言のメリットは,誰にも知られずに,無料で作成することが可能であるということです。

反対にデメリットは,前述の方式に不備があった場合に無効になってしまうことが挙げられます。誰にも教えていない場合には発見されないという危険性,遺言書を紛失してしまったり,他人による隠匿・破棄の危険性というのも考えられます。


法律改正前は,自筆証書遺言の場合,家庭裁判所の検認手続を行わなければいけないことが手続き上の負担として挙げれらていましたが,遺言書保管制度が新設されたことにより,自筆証書遺言でも検認をせずに済ませることが可能になりました。

また,遺言書保管制度によって,紛失・亡失や相続人等の利害関係者による隠匿・破棄,改ざんなどといった部分を防ぐことができるようになりました。

自筆証書遺言の形式に適合するかについて,遺言書保管官の外形的なチェックが受けられるようですので,今後,利用は確実に増えると思います。


公正証書遺言とは

公正証書遺言とは,遺言者本人が,公証人と証人2名の前で,遺言の内容を口頭で告げ,公証人が,それが遺言者の真意であることを確認した上で,これを書面として作成し,遺言者と証人2名に読み聞かせ,又は閲覧をさせて,内容に間違いがないことを確認してもらって作成される遺言書です。


公正証書遺言のメリットは,法律知識と実務経験を有する公証人の関与のもと,方式の不備のない遺言書が作成できること,家庭裁判所の検認手続が不要であること,破棄・隠匿や改ざんのおそれがないことなどが挙げられます。


前述の自筆証書遺言のデメリットのほとんどをカバーできるのが公正証書遺言なのですが,遺言書作成に費用がかかること,証人を確保しなければいけないことがデメリットとして挙げられます。

推定相続人と受遺者は証人になれませんので,確保が難しい場合も出てくるかもしれません。証人は遺言書の内容を知っているわけですので,第三者に遺言書の内容が漏れるという可能性もなくはありません。


なお,遺言書保管制度では,自筆証書遺言のデメリットの多くをカバーできるうえ,証人が不要となりますので,この点からも利用が増えるのではないかと思います。


それでも,公正証書遺言を作成することのメリットは大きいと思っています。

具体的には,公証人が関与していることで遺言書の証明力が高いということです。

遺言に関するトラブルでは,遺言能力について争いになることが多いことから,公証人や証人が関与していることにより,遺言能力の有無での争いを避けることが可能になることがほとんどだと思います。もちろん,公正証書遺言であれば,絶対的に遺言としての効力が認められるというわけではありませんが,自筆証書遺言に比較すると,その差は大きいのではないかと思います。

また,公証人は出張してくれますので,入院先の病院や施設などでも作成することが可能ですし,自筆であることも求められておりませんので,身体的に自筆証書遺言を作成できない場合でも,作成が可能です。


なお,公正証書遺言の作成を弁護士に依頼した場合,弁護士に希望する内容を伝え,弁護士が作成した案をもとに公証人とで事前に協議して内容を確定し,当日は,最終確認のみで終わることがほとんどです。当事務所にご依頼頂いた場合,証人2名の手配も可能です。



遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット

これまで記載した内容からすれば,弁護士に作成を依頼する必要がないとも思えるかもしれませんが,専門家である弁護士を依頼するメリットはあります。

遺言書の形式面だけでなく,十分に内容面を検討して作成することが可能となります。遺留分侵害額請求などの想定しうるトラブルを予め考慮し,遺言者の遺言書に込めた本意が実現するように対応致します。

弁護士を遺言執行者に指定することで,複雑な内容の遺言であってもスムーズに執行されますので,遺言書の作成とともに遺言執行者とするのもお薦めしています。


からんこえ法律事務所では,遺言書作成を始めとして遺産相続に関するご相談に対応しております。

お気軽にお問い合わせ下さい。


【関連条文】

民法第968条 

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

民法第969条

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人二人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。


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