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  • 執筆者の写真弁護士高橋 広希

相続法改正 遺留分制度に関する改正について

更新日:2021年11月11日


2018年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により,相続に関する規定が改正されました。

自分自身の備忘も兼ねて,相続法改正について説明します。


今回は,遺留分制度に関する改正の概要を紹介します。施行期日は2019年7月1日となっておりますので,既に施行されています。


遺留分制度とは,被相続人(亡くなった人)が有していた相続財産について,その一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です。一定の法定相続人(遺留分権利者)とは,被相続人の配偶者,子,直系尊属(親,祖父母)のことであり,兄弟姉妹には遺留分はありません。


これまでは,遺留分に関する権利行使(遺留分減殺請求)により,遺贈又は贈与の一部が当然に無効となり,共有状態が生ずることになっていましたが,改正により,遺留分に関する権利行使(遺留分侵害額請求)をすることによって,金銭債権が発生することとなりました(民法1046条第1項)


金銭債権となったことにより,受遺者又は受贈者が直ちに金銭を準備できないことも想定されます。遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者又は受贈者が,金銭を直ちには準備できない場合には,受遺者等は,裁判所に対し,金銭債務の全部又は一部の支払につき期限の許与を求めることができます(民法1047条第5項)。


遺留分侵害額請求権にも旧法と同様に期間の制限があり,遺留分権利者が,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅します。また,相続開始の時から十年を経過したときも,同様に時効によって消滅します(民法1048条)。


遺留分侵害額請求権を行使したことによって生じた金銭債権は,通常の金銭債権と同様に消滅時効にかかります。したがって,債権法改正法施行前(2020年3月31日まで)は10年間(民法167条1項),施行後(2020年4月1日以降)は,5年間の消滅時効となります(改正後の民法166条第1項1号)


上記のほかにも改正されていますが,また別の記事で紹介したいと思います。


当事務所では,遺産分割,遺留分,遺言に関する法律相談を取り扱っておりますので,お悩みがある方はお問い合わせ下さい。

 

【関連条文】

民法1046条第1項 遺留分権利者及びその承継人は,受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

民法1047条第5項 裁判所は,受遺者又は受贈者の請求により,第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

民法1048条 遺留分侵害額の請求権は,遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも,同様とする。



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