top of page
  • 執筆者の写真弁護士高橋 広希

特別縁故者に対する相続財産の分与

更新日:2021年3月3日

相続人がいない,または相続人全員が相続放棄をし,被相続人(亡くなった方)に財産がある場合,相続人以外の方に財産の分与が認められることがあります。


特別縁故者に対する相続財産の分与は,民法958条の3に規定があります。同条では,第1項で「前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」となっています。


どういった方が特別縁故者として認められるかは,一概には言えませんが,条文上に記載されている「生計を同じくしていた者」「療養看護者」「その他被相続人との特別の縁故があった者」に認められます。


生計を同じくしていた者とは,内縁の配偶者,事実上の養子,伯父(叔父)・伯母(叔母),子の配偶者,未認知の非嫡出子の親族・血縁者のみならず,非親族・非血縁者でも生計を同一にしていた場合に該当します。


療養看護者とは,献身的に被相続人の世話をして,療養看護に尽力していた場合に該当します。ただし,正当な対価を得ている場合には,原則として該当せず,例外的に,対価以上の献身的な看護が尽くされていた場合には,対価を得て看護している者でも該当することになります。


その他被相続人と特別の縁故があった者とは,親族・血縁者,非親族・非血縁者だけでなく,法人であったり,権利能力なき団体(任意団体など)でも該当する場合があります。

生計同一者,療養看護者は,特別縁故者に該当する場合の例示であるとされ,これに準ずるだけの特別な縁故が必要となります。


判断基準としては,被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で,相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった者」ということを挙げている裁判例があります。


生前の交流状況や亡くなった後の関与など,具体的な個別的事情によって判断されます。単に,相続権のない親族であるという理由だけでは認められません。反対に,親族でなくても,特別な縁故があれば,認められるということでもあります。


特別縁故者に対する財産分与の手続きは,先行して相続財産管理人の選任申立てが必要となります。

当事務所では,相続財産管理人選任申立て,特別縁故者に対する相続財産分与の申立てに関する法律相談を取り扱っておりますので,お悩みのある方はお問い合わせ下さい。


最新記事

すべて表示

遺言書を書くべきか

ご相談を頂く中で,遺言書を書く必要がないと思っている方は多いです。 自分は財産が少ないから遺言書を書かなくて良いと思っている,自分の家族は揉めないから書く必要がないと思っている,亡くなる寸前になってから書こうと思っている,といったことを理由に挙げられます。 遺産相続のトラブルを多数見てきた立場としては,遺言書は書いたほうが良いと思っています。 遺言書があればトラブルにならないというわけではありませ

遺言書の書き方・種類

遺言書を作成したいとのご相談を頂くことがあります。ご相談の内容としては,誰にどの財産を相続させたらよいのかというものもありますが,どのように作成したらいいのかという作成の方法について聞かれることが多くあります。 遺言書は,民法の規定に定められた方式で作成しなければなりません。遺言は,厳格な方式が定められており,その方式に従わない遺言は,全て無効となります。 亡くなる前に,口頭で「~~と言われた」と

bottom of page