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執筆者の写真弁護士高橋 広希

債権回収株式会社から書面が届いたら

更新日:2021年11月11日

これまで当事務所にご相談頂いた内容で,よくある法律相談について,ご紹介致します。


突然,債権回収株式会社から金銭を支払うように求められる内容の書類が届いたというご相談を頂くことが多くあります。

別の消費者金融会社(アコム株式会社,アイフル株式会社,SMBCコンシューマーファイナンス株式会社など)から過去に借り入れたことはあるものの,途中で返済ができず,そのままの状態で時間が経過してしまっているというケースの方が多いです。

返済を中断し,その後,引っ越しをして住所を変更していて,債権者には伝えていないのにもかかわらず,書面が届くこともあります。


住民基本台帳法第12条の3第1項において,本人以外の第三者による住民票の写しの交付が認められているため,債権者は,債権回収のために債務者の住民票の写しを請求することが可能です。

そのため,引っ越しをして,引っ越し先の住所に書類を送付することが可能になります。

債権回収株式会社は,元の債権者である消費者金融会社等から債権の譲渡を受け,債権回収株式会社自身の債権として請求してきます。


ただし,その書面の内容をよく確認すると,消滅時効になっている場合があります。2020年4月1日に改正民法が施行され,時効に関しても改正がありますが,2020年4月1日より前に生じた債権については,改正前の旧法が適用されます。

元の債権者が消費者金融会社である場合には,改正前の商法522条が適用され,5年が消滅時効の期間となります。


最終取引日から,5年が経過していれば,消滅時効が完成し,返済しなくて良いということになります。

ただし,時効には,中断する場合,停止する場合(改正民法では,それぞれ更新・完成猶予となります。)があり,消滅時効が本当に完成しているかどうかは,慎重に判断する必要があります。返済していない間に,訴訟や支払督促がなされ,債務名義が取得されていて,時効が完成していないというケースもあります。弁護士であれば,本人から事情をお聞きし,送付されてきた書面の内容等から,消滅時効が完成しているかどうかを概ね判断することが可能です(ただし,本人の記憶が曖昧なケースもあり,絶対的ではありません。)


消滅時効に関しては,時効期間が経過しただけでは,当然に債務が消滅して返済義務がなくなるわけではありません。債権者に対して消滅時効を援用する必要があります。

時効期間が経過していたとしても消滅時効を援用しなければ,再び債権回収株式会社から書面が送られてくることもあります。訴訟提起をされ,訴訟の対応をしなければならない場合もあります。


当事務所では,債権回収株式会社から返済を求める書面が届いたら,この機会に消滅時効が完成しているかどうかを見極め,消滅時効が完成している場合には,消滅時効を援用する書面を送付することを勧めています。消滅時効が完成しておらず,返済が必要な場合には,債務整理(任意整理,個人再生,自己破産など)を検討することになります。


当事務所では,消滅時効を援用する書面の作成業務のみでも対応をしておりますので,債権回収株式会社から書面が届き,お困りの方はお問い合わせ下さい。


【関連条文】

住民基本台帳法

第十二条の三 市町村長は,前二条の規定によるもののほか,当該市町村が備える住民基本台帳について,次に掲げる者から,住民票の写しで基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第七項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり,かつ,当該申出を相当と認めるときは,当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。

一 自己の権利を行使し,又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者

二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者

三 前二号に掲げる者のほか,住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者


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