弁護士高橋 広希

2019年12月6日

相続法改正 配偶者の居住権保護

最終更新: 2021年11月11日

2018年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により,相続に関する規定が改正されました。

前回は,遺留分制度に関する改正を記事にしました。今回は,配偶者の居住権保護について説明します。配偶者の居住権保護に関する部分の施行期日は,2020年4月1日からです。

①配偶者居住権

配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者に無償での建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(配偶者居住権)が新設されます。

具体的には,遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき,配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに,配偶者居住権を取得することになります(改正民法1028条)。

配偶者居住権の存続期間は,原則として配偶者の終身の間です(改正民法1030条)。ただし,遺産分割協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき,又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは,その定めた期間となります。

配偶者居住権を第三者に対抗するためには,登記を備える必要があり(改正民法1031条),譲渡することはできません(改正民法1032条第2項)。

配偶者居住権が新設されたことにより,建物の所有権を取得せずとも居住を継続することができ,建物以外の相続財産を取得する割合が増加することになります。

②配偶者短期居住権

配偶者は,相続開始時に被相続人所有の建物(居住建物)に無償で居住していた場合には,以下の期間,相続又は遺贈により取得した者(居住建物取得者)に対し,居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得します。ただし,配偶者居住権を取得したときや,欠格事由・廃除により相続権を失っているときは取得することができません。

期間としては,①居住建物について遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日と相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日まで,②①以外の場合は,配偶者短期居住権の消滅の申入れの日から6ヶ月を経過するまでの間となります。

②の具体例としては,居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄をした場合が挙げられます。

配偶者短期居住権が新設されたことにより,被相続人が居住建物を遺贈した場合や反対の意思表示を示した場合であっても配偶者の居住が保護されます。

注意点

・配偶者には,内縁の配偶者は含まれません。

・被相続人が賃借していた建物には適用がありません。

・配偶者居住権は,自己の具体的相続分において取得することになります。

・配偶者短期居住権は,具体的相続分からは控除されません。

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