弁護士高橋 広希

2021年4月15日

特別寄与料の請求をしたいときは(相続人以外の者の貢献)

最終更新: 2021年5月27日

2018年7月6日に成立した「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律第72号)により,相続に関する規定が改正されました。

改正から時間も経過し,時期を逸した感じはありますが,今回は,相続人以外の親族が,被相続人の療養看護等を行った場合,一定の要件のもとで,相続人に対して金銭の支払を請求することができることが明記された特別寄与料の請求について説明します。

施行期日は2019年7月1日となっておりますので,既に施行されています。

改正前は,相続人以外の者は,被相続人の介護に尽くしても,相続財産を取得することができないこととなっていました。例えば,被相続人の長男が被相続人より先に死亡し,亡長男の妻が,被相続人の介護をしていた場合などには,亡長男の妻は相続人ではないため相続財産を取得できないことになります。

新たに導入された民法1050条により,被相続人の親族に限り,相続人に対し,特別寄与料の支払いを求めることができるようになりました。

請求者は,被相続人の親族に限定され,被相続人が死亡した時点(相続開始時点)で親族であることが必要であると解されています。なお,親族とは,民法725条により,六親等内の血族,配偶者,三親等内の姻族とされています。

特別寄与料の請求は,遺産分割の当事者として行うのではなく,遺産分割の手続外で,相続人に対する金銭の支払いを求めるものです。

特別の寄与の制度の対象となるのは,被相続人に対して,無償で療養看護その他の労務の提供があった場合に限定されています。

特別寄与料の額は,一次的には当事者間の協議によって決められますが,協議が調わない場合には,家庭裁判所において,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めることになります。

「笑う相続人」という言葉があるように,法定相続人であるというだけで,生前,被相続人に対して何もしていない(ほとんど関与していない)のに遺産を取得する人がいる一方で,法定相続人ではないというだけで,遺産を取得できないというアンバランスさを少しでも解消するための制度だと思います。

実際に,年を取ってから,子どもと疎遠になり,近くに住む兄弟姉妹と協力して生活するという方は少なくないと思います。遺言書を作成することが望ましいとは思いますが,必ずしも遺言書を作成できるわけではありません。そういった場合に,この兄弟姉妹が相続人である子に請求するという場面が多くなるのではないかと思います。

特別寄与料は,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき,又は相続開始の時から一年を経過したときには時的制限により請求ができなくなります。短い期間内に請求しなければならず,速やかに行動する必要があります。

当事務所では,遺産分割,遺留分,遺言書作成,特別寄与料,祭祀承継等に関する法律相談を取り扱っておりますので,お悩みがある方はお問い合わせ下さい。

【関連条文】

民法第1050条第1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

第2項 前項の規定による特別寄与料の支払について,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者は,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき,又は相続開始の時から一年を経過したときは,この限りでない。

第3項 前項本文の場合には,家庭裁判所は,寄与の時期,方法及び程度,相続財産の額その他一切の事情を考慮して,特別寄与料の額を定める。

第4項 特別寄与料の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

第5項 相続人が数人ある場合には,各相続人は,特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。