​インターネット関連の問題でお困りの方へ

1 投稿の削除請求について

 ご相談頂く中で多いのは,匿名掲示板やブログなどで誹謗中傷されているので,投稿を削除したい,書き込んだ人物を特定したい,というものです。

 削除請求や発信者情報開示請求をするためには,自分の権利(名誉権,プライバシー権,肖像権など)が侵害されていることが必要です。著作権侵害であれば,自己が権利者であるということを明らかにする必要があります。以下では,誹謗中傷(名誉毀損)を前提として記載します。

 自分の権利が侵害されているかの判断にあたっては,インターネット上に書き込まれている内容が正に自分に対してなされているかどうかの判断が必要です。フルネームが記載されていても,同姓同名の他人のことの可能性があります。一方で,伏字であったり,名字だけの記載(ペンネームなどの場合も含む)であっても文脈や他の記載から同定することができれば,権利が侵害されているということができます。


●削除請求を行う流れの概要としては,以下のとおりです。

①サイト管理者に対する任意の削除依頼

 サイトごとに削除依頼の方法が異なりますので,まずは,サイトの削除依頼の方法や利用規約を確認します。そのうえで,サイトの方法に沿った削除依頼を行います。

②送信防止措置依頼書の送付

 削除依頼のフォームがない(書面による削除依頼のみ受け付ける場合もあります),またはサイトの方法に沿った削除依頼をしても削除されない場合には,サイト管理者等に「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」(一般社団法人テレコムサービス協会の書式)(サイトによっては専用の書式が用意されている場合があります)を送付し,削除を求めます。

 ご自身で削除の依頼を行う場合には,インターネット違法・有害情報相談センターを活用することもご検討頂いたほうがよろしいかもしれません。

③削除の仮処分

 サイト管理者等が任意の削除に応じてくれない場合には,法的手続きへと進んでいくことになります。

削除請求をする法的手段としては,民事訴訟によることも可能ですが,早期の削除実現のため,侵害情報の削除を求める仮処分命令を裁判所に申し立てることになります。

④削除請求訴訟

 仮処分命令が認められれば,削除が実現されるため,通常の民事訴訟を利用するメリットがある場合(担保が不要である点など)にのみ利用することになります。

2 発信者情報開示請求

 発信者情報とは,以下の事項のことを指します(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令から)。


① 発信者の氏名又は名称

② 発信者の住所

③ 発信者の電話番号

④ 発信者の電子メールアドレス

⑤ 発信者のIPアドレス及びポート番号

⑥ 携帯電話端末等からのインターネット接続サービス利用者識別符号

⑦ SIMカード識別番号

⑧ 4ないし6から侵害情報が送信された年月日及び時刻(タイムスタンプ)

 

 発信者情報開示請求を行う流れの概要としては,以下のとおりです。

①サイト管理者に対する任意の開示請求

 サイト管理者に対して,発信者情報開示請求書(一般社団法人テレコムサービス協会の書式)を送付するなど任意の開示請求をします。匿名掲示板では,発信者の氏名・住所については把握していないことから,IPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。サイト管理者において,権利の侵害が確認できると判断した場合,IPアドレスとタイムスタンプが開示されます。

②サイト管理者に対する発信者情報開示請求(仮処分)

 サイト管理者がIPアドレスとタイムスタンプを任意に開示しない場合,発信者情報開示請求(仮処分)の法的手続きへと進みます。

③接続プロバイダの特定

 開示されたIPアドレスから発信者が接続したプロバイダを特定します。

④接続プロバイダに対する開示請求

 接続プロバイダに対して,発信者情報開示請求書を送付するなど任意の開示請求をします。

 接続プロバイダは,発信者情報開示請求があった場合には,発信者(接続プロバイダの契約者)に対して意見照会書を送付し,発信者に開示に応じるか否かについて照会します。

 この段階で,発信者は自身の発信について開示請求がなされていることを認識することが多いです。

 接続プロバイダが任意に開示するケースもあるようですが,ほとんどの場合には,任意の開示はなされないとされています。なお,時間を要するなど通信ログが消去される可能性がある場合には,通信ログ保存の請求を行う必要があります。

⑤発信者情報開示請求訴訟

 接続プロバイダに対して,発信者の情報(氏名・住所など)の開示を求める訴訟を提起します。このときに仮処分ではなく,本案訴訟となるのは,接続プロバイダは発信者の情報を保有しており,仮処分であれば必要な保全の必要性を充たさないことが多いためです。

 本案訴訟では,基本的には権利侵害の有無を争点として争われることになります。

⑥発信者の特定

 ⑤の本案訴訟における判決(または発信者からの開示についての同意)により,発信者の特定が完了することになります。

3 発信者情報開示に係る意見照会書が届いた方(発信者側)

 発信者情報開示に係る意見照会は,プロバイダ責任制限法第4条2項に根拠規定があり,開示請求を受けたプロバイダ(インターネット接続プロバイダ,またはコンテンツプロバイダ)は,発信者の意見を聴かなければなりません(発信者と連絡することができない場合などを除きます)。

 発信者情報開示に係る意見照会書は,主にインターネット接続プロバイダ(NTT,KDDIなど)から送られてくることが多いです。

 その理由としては,コンテンツプロバイダ(匿名掲示板など)では,サイト運営者側が投稿者(発信者)の連絡先(住所,メールアドレスなど)を把握していないため,発信者と連絡することができないという条文上の例外規定に該当し,照会を省略することができるからです。


 プロバイダ側が発信者情報開示請求を受け,プロバイダにおいて発信者情報の保有の有無を確認し,発信者情報を保有している場合に,発信者に対して発信者情報に係る意見照会書を送ることになります。


 発信者情報に係る意見照会書には,請求者の氏名,プロバイダが管理する特定電気通信設備(該当のURLが記載されています。),掲載された情報(該当のURLに記載されている内容),侵害された権利,権利が明らかに侵害されたとする理由,発信者情報の開示を受けるべき正当理由,開示を請求されている発信者情報が記載されています。

 なお,請求者の氏名など一部の情報は非開示となっている場合があります。


 意見照会書に記載されている,「掲載された情報」に身に覚えがない場合には,回答書の「発信者情報開示に同意しません。」に○(まる)をつけ,理由として,身に覚えがないことを記載することになります。

 ただし,プロバイダ側からは,契約者宛に照会書が送られてきますので,同居する家族などが発信している可能性がありますので,家族にも確認したほうが良いかもしれません。


 「掲載された情報」を書き込んだものの,発信者情報の開示に同意したくない場合には,同意しない理由を具体的に書くことになります。例えば,掲載された情報について,名誉毀損に該当しない理由などについてご自身の認識を記載しておく必要があります。

 何も理由を記載しなければ,プロバイダ側が独自に発信者情報の開示をするかを検討することになりますが,発信者の主張を考慮することができなくなりますので,理由は記載するのが望ましいです。

 法律上の権利として開示請求がなされていますので,開示に同意しない理由については,法的な反論をきちんとする必要があります。なお,発信者情報開示に係る意見照会書が届いたからといって,直ちに違法行為を行ったと断定されるわけではありません。


 回答書は,到着後から2週間以内に提出するように求められることがほとんどですので,記載方法がわからない場合などには,すぐに専門家に相談することが望ましいです。


 プロバイダ側は発信者からの回答書の内容を踏まえ,請求者に対して,発信者情報を開示するか否かを判断し,最終的にプロバイダが開示するかどうかを決定します。権利侵害が明らかな場合には,発信者の同意がなくとも開示される場合があります。


 プロバイダ側が請求者に対し,発信者情報の開示を拒否し,請求者側が納得できない場合には,請求者は,プロバイダ側を相手に裁判上の手続きを行っていくことになります。

 裁判所の判断により,開示が認められた場合には,発信者の同意の有無に関係なく,発信者情報が開示されることになります。